全国伝統歴史 町並み散歩/古い城下町や宿場町、古民家を写真で観光

宿場の賑わい残る演劇と温泉の町
宿場町「山鹿」の町並み

熊本県 山鹿(宿場町・在郷町)
商家民家蔵元洋風建築

 山鹿のなりたち

平安時代末期に温泉が発見された山鹿。中世は菊池氏の支配下におかれますが、加藤清正の領地となって以降、発展を見せました。江戸時代になると豊前街道が整備され、参勤交代の宿場として賑わいます。

 山鹿へのアクセス

JR鹿児島本線玉名駅から九州産交バス50分 山鹿バスセンター下車。
自家用車利用の場合は九州自動車道菊水ICから県道16号経由で15分。バスセンター裏手近くの観光客用無料駐車場を利用

 人力車でも歩いてでも楽しい

山鹿バスセンター湯の里駅から東へ歩き始めましょう。S字になったカーブを過ぎれば豊前街道にやってきます。
豊前街道は豊前小倉から肥後熊本を結ぶ街道で、参勤交代に使われたほか、さまざまな物資の供給路として機能してきました。山鹿はその途中にあることから物資の中継地として賑わいを見せるようになります。

街道を南へ進み、最初の三差路を左折すると左手に大きな建物が見えてきました。八千代座(やちよざ)です。

八千代座

八千代座は明治43年(1910年)に建てられた演芸場で、山鹿の商工会の有志たちが1株30円の株を建設資金として募り、建てられました。江戸時代の古典的様式ながらも、ドイツ製レールを使った廻り舞台を設置するなど当時の海外の先進技術も用いられています。

八千代座の内部

内装も風情たっぷり。希少となった伝統的な芝居小屋の様式をしっかりと伝えていて、歌舞伎公演だけでなく、大衆演芸、コンサートの場として利用されています。

再び豊前街道に戻って南下を開始しましょう。町屋を再利用した無料案内所「街道あるきあんない処 ぶらぶぜん」で一息入れて、お役立ち情報を入手してもいいかもしれません。

豊前街道

少し下ると右に折れる辻があり、すぐに不思議な造形の門が視界に入ります。これは石門
金剛乗寺
(こんごうじょうじ)の門で、金剛乗寺は9世紀に創建された天台宗の寺院。西の高野山と呼ばれるほどの広い伽藍を誇りましたが、衰えてしまったのちに再興しています。
石門は、文化元年(1804年)に甚吉という石工によって造られた凝灰岩の切石を用いており、和風とは違った趣を醸し出しています。

石門

石門の近くには石造りの洋風建築が。大正14年(1925年)に開店した旧安田銀行山鹿支店の建物。現在は山鹿灯籠民芸館として木や金具を使わずに和紙と糊だけで作られる伝統工芸品「山鹿灯籠」の歴史を学べます。

山鹿灯籠民芸館

国道325号の交差点まで出てきたらひとやすみしましょう。交差点わきにあし湯があります。無料で使えますので、ぜひとも利用を。底に小石が敷き詰められていて、踏みしめると足の裏のツボをいい按配で刺激してくれますよ。

あし湯

あし湯でのんびりしたら、国道を渡ります。国道沿いに立つショッピング施設「温泉プラザ山鹿」の南西に小さなお堂が佇んでいます。

薬師堂

薬師堂

15世紀半ばの春、突如源泉が枯れてしまった山鹿温泉。そこで金剛乗寺の住職、宥明法印が薬師堂を建てて温泉の復活祈願をすると再び湯が湧いたと伝わっています。温泉が復活した12月20日を記念して、薬師堂では毎年この日に温泉復活感謝祭が営まれてきました

その薬師堂よりはるかに目立つのがさくら湯の建物。威風堂々のどっしりとした甍は重厚感たっぷり。17世紀、御茶屋と呼ばれる藩主たちの宿泊所として誕生し、明治初期には大改築をして「さくら湯」と名乗り、庶民に開放されました。
その後長らく九州最大級の公衆浴場として愛されてきましたが、老朽化と再開発の問題から昭和48年(1973年)に閉鎖・解体されてしまったのです。

さくら湯

さくら湯

解体後のさくら湯は新たに完成したビル内で営業を再開しますが、付帯するショッピングビルとともに老朽化したため、ともに再開発されました。そして平成24年(2012年)、唐破風のある南北の玄関や十字にクロスした独特の屋根の形などを再現してここに甦りました

そのまま通りを南下していきます。弘化3年(1846年)、昭和46年(1971年)に発生した大火事で延焼を免れたことから、「この地蔵のところで火事が止まる」とありがたがられた「火除け地蔵」を横目に通り過ぎましょう。

原文具店

菊池川のたもと近くまで行くと右手に木屋本店の建物が。天保13年(1842年)に創業した味噌、酢の醸造元です。

木屋本店

菊池川は周辺が米どころだったため水運を利用して米が運ばれ、ちょうどこのあたりがその集積地となっていました。川辺には惣門と呼ばれる門が立ち、いわば検問所の役割を果たしていたためこの地区は今でも惣門という地名で呼ばれています。

米が集まるところにはその産業も集まるというわけで、上記の味噌、酢だけでなく、清酒の醸造も行われました。木屋本店の隣には千代の園酒造が店を構えています。こちらには無料で見学できる「酒造資料館」もあるので、ぜひ立ち寄っておきましょう。

画像引用:山鹿市観光課様 (http://www.yamaga-kankoh.hinokuni-net.jp/) 山鹿温泉観光協会様(http://www.y-kankoukyoukai.com/index.html)