全国伝統歴史 町並み散歩/古い城下町や宿場町、古民家を写真で観光

重厚な漆喰と細かな意匠が美しい
在郷町「内子・八日市・護国」の町並み

愛媛県 内子(在郷町)
商家民家洋風建築

 内子のなりたち

大洲藩の交通の要所であった内子は物資の集積地として発展し、18世紀からはハゼノキの植林とそれを利用した木蝋(もくろう)の生産が盛んとなったことで、町家や豪商の屋敷が建ち並ぶようになりました。

 内子へのアクセス

JR内子線内子駅から徒歩で向かいましょう。自家用車利用の場合は松山自動車道内子五十崎ICから国道56号を北上して5分、左折して町並駐車場(有料)を利用します。

 目を凝らせば豊かな意匠

JR内子駅の出口を出てすぐ右手にある旅里庵(たびりあん)は内子の観光案内基地。ここで観光パンフレットなどを入手して、いざ出発しましょう。ここでレンタサイクルを利用することもできます。
県道244号を東へ歩き、1つ目の信号を左折して県道54号へ。斜め右へ入る小道を通り、郷之谷川の橋を渡って、しばらく進んで右に曲がったところに内子座(うちこざ)があります。

内子座

地元の人々の娯楽の場として大正天皇即位記念に建てられた演芸場で、歌舞伎や演芸芝居の場として、昭和25年(1950年)頃からは映画館として活用されていました。昭和42年(1967年)には商工会館としても使われるようになりましたが、時代の流れと老朽化ゆえ取り壊しの危機に遭います。
しかしながら地元の人々の残すべしとの声を受けて、昭和60年(1985年)に復原され、今日でも歌舞伎や各種催しの会場として利用され続けています。

内子座の前をそのまま進むと突き当たりが本町通りです。左折してさらにどんどん進みましょう。左手に重厚な西洋建築、内子町ビジターセンターA・runze(アルンゼ)が見えてきます。裏手にはカフェや特産品を扱うまちの駅Nanze(ナンゼ)もありますので、ちょっと立ち寄ってみては。

内子町ビジターセンターA・runze

内子町ビジターセンターA・runze

昭和11年(1936年)に建てられた警察署の建物が図書館を経て、現在は観光情報の発信の場として使われています。

そのまままっすぐ進むと、今度は右手に商いと暮らし博物館。江戸時代後期から明治時代に建てられた商家を使用しており、薬屋の商いと暮らしを再現しています。

商いと暮らし博物館

そしてさらに直進し、伊予銀行内子支店の瀟洒な建物が見えたら、その交差点を斜め左に入って行きます。しばらくすると重要伝統的建造物群保存地区のエリアに入り、左手に町屋資料館があります。

町屋資料館は寛政5年(1793年)に建造された米岡家の住宅。江戸時代の八日市の一般的な町家の特徴である蔀戸(しとみど)や大戸(おおど)を全面的に開放できる造りになっており、当時の町屋の風情がそのまま残っています。

町屋資料館

続いて進んでいけば、左手に国の重要文化財に指定されている大村家住宅の白壁が目に入ってきます。18世紀末の寛政年間に築造されたもので、雑貨商、染物商などを生業としていました。内部は公開されておらず、白漆喰壁に虫籠窓(むしこまど)を設けた外観のみ見ることができます。平成24年(2012年)に外装などを全面修復しました。

大村家住宅

すぐそばには同じく重要文化財指定の本芳我家住宅(ほんはがけじゅうたく)が、巧緻な彫物をあしらった出格子(でごうし)の堂々たる姿を見せてくれます。

本芳我家住宅

こちらは木蝋の生産で潤った豪商で、漆喰による浮彫の装飾である鏝絵(こてえ)の懸魚(げぎょ・棟木や桁の端を風雨から守るべく設置する装飾的な繰形などがある板)や鬼瓦などの意匠が見られます。屋根の先には鳥衾(とりぶすま)と呼ばれる前方に突き出ている円筒状の瓦も見えます。
内部は非公開ですが、庭園の見学は可。

本芳我家住宅

さらに右手にある旧中芳我家の主屋はギャラリーいもんとして、故・井門敬二氏の油絵や墨書画と古陶磁器などのコレクションを展示しています。

その先は内子最大の製蝋業者であった本芳我家から分家した上芳我家(かみはがけ)の邸宅と木蝋産業の総合展示をしている木蝋資料館・上芳我邸の広大な敷地が続きます。

木蝋資料館・上芳我邸

木蝋製造はこの地で栽培されたハゼノキの実を原料とし、潰した実を蒸して圧搾します。その絞り汁(蝋)を冷やしてから天日で30日から40日乾燥させると、白いロウソクの色になります。

藩の保護と奨励により木蝋生産が拡大した内子では、19世紀末以降、万国博覧会や内国勧業博覧会で高い評価を獲得したこともあり、生産高を伸ばして行きました。その利益により各家は意匠を凝らした造りの町屋を建造したのです。
しかしながら大正時代になり、原材料不足や代替品の登場といった逆境の時代に入ると木蝋の生産は落ち込み、いつしか姿を消してしまいました。
かつて盛んだった木蝋製造の工程や道具などを、こちらの資料館で学ぶことができます。

木蝋資料館・上芳我邸

この先をさらに進むと、町並み保存の歴史や仕組み、建物の構造や使われた道具などを展示している八日市・護国町並保存センターもあります。無料で見学できますので、総仕上げに見てゆくのも良いでしょう。

画像引用:社団法人 愛媛県観光物産協会様(http://iyokannet.jp/corporate/photo/list/)
内子町ビジターセンター様(http://www.town.uchiko.ehime.jp/soshiki/3/visitor.html)
四国ツーリズム創造機構様(http://www.shikoku.gr.jp/index.php?cID=12405)
八幡浜・大洲地区広域市町村圏組合様(http://www.nishiiyo.jp/play/with/omurake/)
列島宝物館様(http://www.i-treasury.net/)